草や花、そして樹木や果実など、たくさんの自然に囲まれて暮らしています。
この自然の中で自生している植物たちの香りは、私たちをワクワクさせてくれたり、疲れた気持ちを和らげたり、爽やかにしてくれたりします。
この香りをギュッと濃縮させたものが精油(エッセンシャルオイル)です。
AEAJによる精油の定義
精油(エッセンシャルオイル)は、植物の花、葉、果皮、果実、心材、根、種子、樹皮、樹脂などから抽出した天然の素材で、有効成分を高濃度に含有した揮発性の芳香物質である。
各植物によって特有の香りと機能をもち、アロマテラピーの基本となるものである。アロマテラピー検定 公式テキスト1級
AEAJ(日本アロマ環境協会)の定義のように、精油は天然のものです。
しかし、植物を高濃度に濃縮したものであり、使い方を間違えてしまば効果を得られないばかりか、思わぬトラブルになってしまうこともあるので注意が必要になってきます。
ここではアロマを始める前に知ってほしいガイドラインをまとめました。
厳選して12つを紹介します。
原液を直接肌に塗布しない
薬のような作用を高濃度に含んでいるのが精油です。
肌に使用するときは植物油などで希釈(薄めて)することが大切です。
誤って原液が皮膚についた場合には大量の流水で洗い流してください。
その後、赤みや刺激、発疹などの皮膚に異常がみられたときは医師の診察を受けるようにしましょう。
診察の際にはどの精油が皮膚についてしまったのかなど、分かる範囲で説明をするとよりスムーズです。
絶対に飲まない
海外では内服の事例もありますが、それはその国の医師による判断です。
精油は飲むことと皮膚からの吸収では身体への影響が異なったり、神経毒性や皮膚刺激のある精油が一部あったりします。
ですので決して自己判断で飲まないでください。
最悪な場合には肝臓や腎臓に支障をきたす場合があります。
万が一飲み込んでしまった場合は、大量の水で口の中をすすぎましょう。
それでも体調がすぐれないときは病院にて診察を受けるようにしてください。
また、お子さんやペットに関しては吐かせずに病院で診察を受けてください。
どちらも受診のときに精油を持参しましょう。
使用できる精油の量を守る
身体が精油を代謝できる量は限られています。
日本人の場合、大人が1日に使用できる量は5〜6滴です。(1滴0.05ccの場合)
また、精油の濃度が濃すぎたり長期間使用したりすると、吐き気や頭痛、皮膚のアレルギーなどの症状を引き起こします。
その際は直ちに使用を中止し、皮膚を洗い流したり換気をして新鮮な空気と入れ替えてください。
実は同じ精油を毎日2週間以上使わないことも身体にとって重要なことになります。
これは同じ精油ばかり使用することによって肝臓に負担がかかり、分解されずに蓄積された芳香成分によってアレルギーを引き起こす可能性があるからです。
肝臓をお休みさせるためにも次に使用するときは1種間ほど間を空けて使うようにしてください。
他にも皮膚の刺激を引き起こす原因になったり、ホルモンバランスを乱れさせたりと同じ香りを使うことにはリスクがあります。
こういったことを防ぐためにも精油のローテーションを行うようにしましょう。
パッチテストをする

アロマは自己責任で行うことが原則です。
精油はたくさんの種類があって、さまざまな芳香成分からできた植物由来のものです。
また、同じラベンダーという精油でも、メーカーや採取された時期によって、成分が多少異なる場合があります。
そのため、敏感な体質やアレルギーを持っている場合はもちろんですが、精油と皮膚の相性を見るためにパッチテストを実施するようにしてください。
では、どんなときにパッチテストが必要なのか紹介していきます。
パッチテストが必要なもの
- 精油
- クレイ
- キャリアオイル
- ハーブの浸剤や煎剤
- ハーブのチンキや浸出油
基本的に、肌に使用する場合はパッチテストを行いましょう。
パッチテストのやり方
- 精油
使用したい精油を希釈してパッチテストを行う方法です。
- 精油をキャリアオイルで1%の濃度に薄めます。(精油1滴=0.05ml)
- ブレンドしたオイルを二の腕の内側などの皮膚が柔らかいところに塗布します。
- 数時間から数日間放置します。
アレルギーが数日経ってから出ることが稀にありますので、絆創膏などを貼るなどして様子を見ましょう。
また、精油を薄めるときにはキャリアオイルを使用します。
このキャリアオイルにアレルギーがある可能性もあるため、こちらのパッチテストも必要になってきます。
- クレイ
肌に合わない場合、すぐに痛みやかゆみを感じ始めるため、5~10分程度の放置時間でわかります。
- 少量のクレイに精製水を混ぜてクリーム状にする。
- 二の腕などの柔らかいところに塗布し、5〜10分ほど様子を見ます。
その他(キャリアオイル・ハーブの浸剤や煎剤、チンキや浸出油)
その他に該当するものに関しては何かで薄めたりするのではなく、そのまま皮膚に塗布します。
その際、必要であれば上から絆創膏を貼り、数日間様子を見てください。
- 二の腕の内側などの柔らかい皮膚に塗布します。
- 数時間〜2日ほど放置して様子を見ます。
パッチテスト中に異常が生じた場合、直ちに中止して大量の水で洗い流してください。
その後、ひどいようでしたら医師の診察を受けるようにしましょう。
また、本格的にアレルギーの検査をしたい場合は、自分で行うパッチテストではなく、医師に依頼してください。
使用期限・保管場所を守る

精油は天然なものだからこそ、製造時から成分の変化が始まっています。
簡単に言えば、だんだん鮮度が落ちていくということです。
この鮮度が落ちてしまった(酸化が進んでしまった)精油は、次第に成分が変わってしまうため、薬理作用も低下しているので本来の効果は期待できません。
そのため、スキンケアやヘルスケア、掃除などにも使用することはオススメしません。
また、基本的に開封してから1年、柑橘系は半年を目安です。
- 保管場所
直射日光と湿度を避け、冷暗所に保管しましょう。 - 精油の保管容器
遮光性のガラスの容器が最適です。
空気に触れないように蓋をしっかり締め、瓶を立てて保管しましょう。 - 保存期間
開封後1年以内が目安とされています。
特に柑橘系の精油などは他の精油と比較して成分の変化が起こりやすいと言われています。
上記は一般的に言われている変化の目安を紹介しました。
そしてここからは私が長年アロマに携わってきて分かった劣化の目安を紹介していきます。
- 色
無色透明だったりする色が黄みがかったり、オレンジに近い色になったりします。
逆にオレンジの精油に関しては色が抜けたりします。 - 粘性
精油の粘性が強くなります。
ドロップのところや蓋にベタベタと付着します。
(本来粘性があったり、温度で変わる精油もありますので、精油を定期的にチェックしましょう。) - 香り
だんだん酸化している香りがします。
説明がちょっと難しいのですが、金属っぽいが後から追ってくる、、、ツーンとしたような香りが微かに感じるようになります。
香りも定期的にチェックしてください。
火気周りで使用しない
キッチンなどの火気を扱う場所で精油や精油を用いて作製したものを使用する場合、注意が必要です。
精油は『可燃性』という特性を持っているため、精油自体に火が直接接触してしまったら燃えてしまうということを理解しておきましょう。
光毒性(光感作)に注意する

精油は植物から抽出した100%天然のものであり、私たちにとっては有益な作用がたくさんあります。
しかし、そんな精油でも、香りによっては危険な性質を持つものがあり、注意が必要です。
十分な知識を持ったうえで扱うようにしましょう。
- 光毒性(光感作)
芳香成分の一部には、日光などの強い紫外線に当たることによって皮膚に炎症やしみなどを引き起こす毒性を示すものがあり、この反応を『光毒性』(光感作)と呼んでいます。
主に柑橘系の精油に多く含まれていて、芳香成分であるベルガプテンをはじめとするフロクマリン類が原因です。
塗布後、フロクマリン類がUV-Aを含む太陽光に当たることによって皮膚の成分と結合して炎症などの皮膚トラブルが発生します。
そのため、フロクマリンを含む精油を肌に塗布した後は12時間ほど日光に当たらないようにしましょう。
「柑橘系の精油はなるべく夜に使用してください」といわれる理由はここにあります。
また、特に注意したいのがベルガモットの精油です。
ベルガモットは光毒性を最も持つ精油です。
注意が必要な精油である反面、皮膚に使われることが多い香りでもあります。
こういった場合はベルガプテンをを取り除いた精油も存在しますので、そちらを使用するよう
にしましょう。
精油の瓶に貼ってあるラベルに表記してある学名の後に“FCF”(ベルガプテンフリーの略)とあれば、ベルガプテンフリーの証です。
- 柑橘系の精油
オレンジ・ビター、グレープフルーツ、ベルガモット、ユズ、レモン、ライムなど
特にベルガモットには要注意! - セリ科の精油
アンジェリカ・ルート
アロマ環境協会
https://www.aromakankyo.or.jp/basics/literature/new/vol22.php
アロマ環境協会で柑橘精油に含まれるベルガプテン量の比較の記事がありますので参考にしてみてください。
皮膚刺激に注意する
先ほどの光毒性は日光などの強い紫外線などを浴びることによって起こることでしたが、皮膚刺激は皮膚の表面から精油の成分が浸透した時点で皮膚組織や末梢血管を直接刺激することで炎症、紅斑、痒みなどの反応を引き起こすことを指します。
こういったことを起こさないようにするためにも、原液を直接塗布するようなことはせず、まずはパッチテストを行うようにしましょう。
また、劣化した精油を使用しないことも皮膚刺激を起こさないようにするための手段です。
- 皮膚刺激に注意が必要な精油
イランイラン、ジャスミン、ティートリー、ブラックペッパー、ペパーミント、ユーカリなど
精油は薬ではない
精油には身体や心、皮膚を健やかにする働きがありますが、決して西洋医学のような薬ではありません。
不十分な知識と経験であるにも関わらず、急性期の疾患などで使用すれば、取り返しのつかないことにもなりかねません。
また、知識と経験が増えるにつれて精油のちからに頼りがちになってしまうこともあります。
しかし、急性の疾患や精油を使うことで手に負えなくなった場合は、迷わず病院で診察を受けてください。
アロマなどの東洋医学は、未然に防ぐ、予防するという意味で使用します。
命に関わるようなときは必ず病院へ行きましょう。
通院中、投薬中は必ず医師や薬剤師に相談する
精油にはお薬の薬効を妨げてしまうものが含まれていることがあります。
通院中、投薬中の方は精油を使用する前に必ず相談をしましょう。
また、お薬が変更になった場合も医師や薬剤師に相談するようにしましょう。
妊娠中、授乳中は精油の選び方には細心の注意をする

妊娠時は体調を考慮し、芳香浴以外の方法でアロマを楽しむ場合には十分注意しましょう。
また、芳香浴以外のトリートメントなどの施術を受ける場合は、医師や助産師などの経験を積んだ専門家に相談するようにしましょう。
乳児・幼児・子供・高齢者

成長過程にある子供は、大人よりも敏感で外部からの影響をとても受けやすく、突然の違いにも過敏になる傾向にあります。
乳児(0〜1歳)は基本的に芳香浴のみです。
その芳香浴も芳香蒸留水に留めておいてください。
成長過程にある幼児(3歳〜)は大人が使う量1/2の濃度、1/10の時間で行うようにしましょう。
使用できる精油はラベンダー、ティーツリーのみです。
子供(8歳〜)と高齢者(65歳〜)基本的に大人と同じ方法でアロマを楽しめますが、精油の量を半分の濃度で使用してください。
ペットへの利用

近年でアロマが普及したことで、ペットにも利用されることが多くなりました。
ペットの生活環境が向上するのであれば、活用して良い手段のひとつですが、使い方を間違えれば、取り返しのつかないことになりかねません。
私たち人間は肝臓で代謝、解毒する酵素を持っており、尿や糞便中に含まれて排出することができますが、動物たちはこの酵素が少なく、肝臓で代謝、解毒するにはリスクが大きいことがわかっています。
なかでも猫やフェレットなどのネコ科の動物にはこの代謝、解毒する酵素(シトクロムP450酵素群のUDP-グルクロン酸転移酵素)の働きをほとんどを持っていないためアロマを使用することはNGです。
ほかのペットに関して言えることは、原液での使用は避け、希釈したものを直接鼻先に持っていくのではなく、お尻や背中から香るくらいに留めておきましょう。
また、動物ケアの専門家が行う場合ではない限り、希釈濃度は0.1〜0.3%にしておきましょう。
また、消費者安全調査委員会より精油の原液塗布に関しての注意喚起が発せられました。
https://www.caa.go.jp/policies/council/csic/activity_report/2024/assets/csic_cms201_250327_01.pdf
きちんと守った使い方をすれば、無限に楽しめるアロマです。
みなさんやその周りの方が素敵な毎日が送れるようになるカテゴリーのひとつとして、正しく活用していきましょうね。